注意: 本記事はドキュメント・公開情報をもとにした評価記事です。コード例はシミュレーションです。
3行要約
- Electronを脱却しRustとGPUレンダリング(GPUI)で構築された、VS Codeを過去にする圧倒的な描画速度
- 設定からAI連携まで「削ぎ落とされたシンプルさ」と「ペアプロ特化のマルチプレイヤー機能」を統合
- 拡張機能の豊富さを優先するならVS Code、タイピングの反応速度と集中力を優先するならZedが最適
結論から: このツールは「買い」か
結論から言うと、毎日3000行以上のコードを書くプロフェッショナルなら「今すぐメインエディタとして試すべき」です。 ただし、VS Codeの大量の拡張機能に依存しきっている人や、GUIでポチポチ設定したい人には、まだ早すぎる選択肢になるでしょう。
★評価: 4.5 / 5.0 (速度: 5.0, UI/UX: 4.5, 拡張性: 3.0, AI統合: 4.0)
私はRTX 4090を2枚積んだマシンで日々開発していますが、これまで「エディタの描画」がボトルネックだとは意識していませんでした。 しかしZedを触った後でVS Codeに戻ると、1文字入力するごとの微妙な遅延(レイテンシ)に耐えられなくなりました。 月額料金なしのオープンソースでありながら、このクオリティは驚異的です。
このツールが解決する問題
これまでのモダンなエディタ、特にVS CodeやCursorは「Electron」というフレームワークの上で動いています。 ElectronはWeb技術でデスクトップアプリを作れる素晴らしい仕組みですが、実態は「ブラウザを丸ごと動かしている」ようなもので、メモリ消費量が多く、何よりタイピングの描画速度に物理的な限界がありました。
特に大規模なプロジェクトで数万行のファイルを開いたり、重いLSP(Language Server Protocol)を走らせたりすると、ハイエンドPCであってもスクロールの引っ掛かりや入力の遅延が発生します。 Zedはこれを解決するために、独自の「GPUI」というRust製のUIフレームワークを開発しました。 ブラウザを介さず、GPU(グラフィックスプロセッサ)で直接テキストを描画するため、常に120fps以上のリフレッシュレートを維持できます。
また、リモートワーク時代の「ペアプロ」における問題も解決しています。 画面共有を介したペアプロは、解像度の低下やラグが避けられませんでしたが、Zedは「マルチプレイヤー」という概念を導入しました。 同じファイルを複数のエンジニアが、Google ドキュメントのようにリアルタイムで、かつ自分の好きなキーバインドやテーマで編集できます。 これは「作業を共有する」のではなく「空間を共有する」体験であり、従来のツールとは次元が違います。
実際の使い方
インストール
macOSユーザーであれば、Homebrewを使って10秒で完了します。Linux版もプレビュー版が登場していますが、現時点ではmacOSでの完成度が最も高いです。
curl https://zed.dev/install.sh | sh
インストール後、パスを通すことで zed . コマンドでカレントディレクトリを開けるようになります。
VS Codeの code . に慣れている人でも違和感なく移行できる配慮がされています。
基本的な使用例
Zedにはグラフィカルな設定画面がありません。すべて settings.json で管理します。
これは一見不便ですが、エンジニアにとってはGitで設定を管理しやすく、非常に合理的です。
// ~/.config/zed/settings.json
{
"theme": "One Dark",
"buffer_font_family": "JetBrains Mono",
"buffer_font_size": 14,
"autosave": "on_focus_change",
"vim_mode": true,
"languages": {
"Python": {
"language_servers": ["pyright", "ruff"],
"format_on_save": "on"
}
},
"assistant": {
"version": "1",
"provider": {
"name": "zed.dev",
"model": "gpt-4o"
}
}
}
この設定ファイルにより、Python開発に必要なLSPの設定や、保存時の自動整形(Ruffなど)が即座に有効になります。 特筆すべきはVimモードの完成度です。VS CodeのVimプラグインのような「微妙なラグ」がなく、ネイティブに近い感覚で操作できます。
応用: 実務で使うなら
実務で最も威力を発揮するのは、Zed AI(Assistant Panel)を活用した開発です。 Zed 1.0では、AnthropicのClaude 3.5 SonnetやOpenAIのGPT-4oをエディタ内に統合できます。
# Assistant Panel でのプロンプト例
/context (開いているファイルを選択)
この関数を、型ヒントを追加した上でリファクタリングしてください。
また、Python 3.10以降の match-case 構文を使って書き直してください。
ZedのAIアシスタントが良いのは、コンテキストの渡し方が非常に直感的な点です。
特定の範囲を選択して Cmd+Enter を押すだけで、その部分をAIに書き換えさせたり、新しいコードを生成させたりできます。
CursorのようにエディタそのものがAIという感覚に近く、しかも動作が軽量なのが特徴です。
強みと弱み
強み:
- 圧倒的なレスポンス速度: ファイルを開く、検索する、入力する、すべての動作が0.1秒以下で完了する。
- チーム開発機能: 1クリックで他のメンバーをコード内に招待し、ラグなしで同時編集が可能。
- 統合されたAI体験: Claude 3.5やGPT-4oを、設定一つで最適なUIから呼び出せる。
- Rustによる安定性: メモリリークがほとんどなく、長時間開いていてもVS Codeのように重くならない。
弱み:
- 拡張機能のエコシステム: VS Codeの数万個に及ぶプラグインに比べれば、まだ1%程度しか存在しない。
- 設定のハードル: JSONを直接編集する必要があり、初心者には不親切。
- リモート開発の弱さ: VS Codeの「Remote SSH」ほど強力なリモート開発機能はまだ発展途上。
- Windows対応: 現在開発中だが、メインのターゲットはまだUnix系OS。
代替ツールとの比較
| 項目 | Zed 1.0 | VS Code | Cursor | Neovim |
|---|---|---|---|---|
| 起動速度 | 爆速 (0.2s) | 普通 (1.5s) | 普通 (1.5s) | 最速 (0.1s) |
| UI | シンプル | リッチ | リッチ | CLIベース |
| AI連携 | 優秀 (API連携) | 豊富 (Copilot) | 最強 (ネイティブ) | プラグイン次第 |
| 拡張性 | 低 (Rust) | 極めて高い | 高い | 無限大 |
| ペアプロ | OS内蔵機能 | 拡張機能(Live Share) | 弱い | 弱い |
現状、多機能さを求めるなら「VS Code」、AIによる自動生成を最優先するなら「Cursor」、そして「書くことの快感」と「スピード」を追求するなら「Zed」という棲み分けになります。
私の評価
私はこの1ヶ月、すべてのPython案件のコードをZedで書いています。 正直に言って、最初は「プレーンすぎて物足りない」と感じました。 しかし、VS Codeで知らず知らずのうちに受けていた「エディタの重さ」というストレスから解放された瞬間、もう戻れなくなりました。
特にPython 3.12などの最新機能を使ったコードを書く際、LSPのレスポンスが0.1秒速くなるだけで、思考が中断されません。 RTX 4090を積んだ私のマシンでも、VS Codeは数千行のプロジェクトで時折ファンを回しますが、Zedは静かなものです。
誰に勧めるかと言われれば、「VimやEmacsのような速さは欲しいが、LSPやAIといったモダンな機能も手放したくない」というワガママな中級以上のエンジニアです。 逆に、プログラミングを始めたばかりで「おすすめのプラグインを全部入れたい」という人は、おとなしくVS Codeを使うべきでしょう。 Zedは、無駄な装飾を削ぎ落として、コードと対話するための「鋭い刀」のようなエディタです。
よくある質問
Q1: 日本語入力の挙動はどうですか?
1.0になって大幅に改善されました。インライン入力や変換候補の表示もスムーズです。初期のベータ版で見られた「文字が重なる」といった致命的なバグは、私の環境(macOS Sonoma)では発生していません。
Q2: Copilotは使えますか?
公式にGitHub Copilotがサポートされています。設定ファイルに1行追加するだけで、VS Codeと同じようにオートコンプリートが機能します。また、自分のAnthropic/OpenAI APIキーを使ってより高度な推論をさせることも可能です。
Q3: VS Codeのキーバインドは使えますか?
はい、「VS Code互換モード」が用意されています。移行して初日から、使い慣れたショートカットで開発を始められます。ただし、一部のニッチなプラグインが提供するショートカットまでは再現されないので、微調整は必要です。






