所要時間: 約40分 | 難易度: ★★★☆☆

この記事で作るもの

  • Gitの差分(Diff)を読み取り、Qwen3.6-27BまたはCoder-Nextを使ってコードの脆弱性やリファクタリング案を自動生成するPythonスクリプト
  • ローカルLLMをAPIサーバー化し、外部依存なしでコード解析を完結させる環境
  • 前提知識: Pythonの基本的な読み書きができること、Gitの基本操作
  • 必要なもの: VRAM 16GB以上のGPU(RTX 3080 12GB以上推奨)、Python 3.10以降

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なぜこの方法を選ぶのか

VS CodeのCopilotやCursorは非常に優秀ですが、社外秘のコードを扱う場合や、APIコストを気にせず数千行の差分を投げたい時にはローカルLLMが最強の選択肢になります。今回、Redditで話題になったQwen3.6-27BとCoder-Nextは、これまでの7B〜14Bクラスとは比較にならない「文脈の理解力」を持っています。

Qwen3.6-27Bは論理的整合性が高く、Coder-Nextは特定のフレームワークにおける「お作法」に強いという特性があります。これらをLM StudioやOllamaでサーバー化し、Pythonから制御することで、自前で「最強の専属レビュアー」を構築できるのがこのアプローチの最大の利点です。

Step 1: 環境を整える

まずは推論サーバーを立てます。今回は最も汎用性が高く、モデルの切り替えが容易な「Ollama」を使用します。

# Ollamaのインストール(Linux/Mac)
curl -fsSL https://ollama.com/install.sh | sh

# Qwen3.6-27Bをプル(公開されている最新の量子化版を指定)
ollama run qwen3.6-coder:27b-instruct-q4_K_M

# Coder-Next(DeepSeek系後継)をプル
ollama run coder-next:latest

Ollamaを使う理由は、複雑な量子化設定を意識せず、q4_K_M(4ビット量子化)などのバランスの良い設定を自動で適用してくれるからです。27Bモデルはフル精度だと50GB以上のVRAMが必要ですが、この設定なら18GB程度のVRAMで快適に動作します。

⚠️ 落とし穴: モデルのプル中に「メモリ不足」で止まる場合は、バックグラウンドで動いているブラウザやゲームをすべて落としてください。特にWindows環境ではVRAMの割り当てがシビアです。もしRTX 3060などの12GBモデルを使っている場合は、27Bではなく「14B」や「7B」のモデルを選択しないと、推論速度が0.5 token/sec程度まで落ち込み、実用性に欠けることになります。

Step 2: 基本の設定

PythonからOllama APIを叩くための準備をします。ライブラリは軽量な requests のみを使用します。

import os
import subprocess
import requests
import json

# Ollamaのデフォルトエンドポイント
OLLAMA_API_URL = "http://localhost:11434/api/generate"

# モデルの切り替え。Redditで高評価だったQwen3.6-27Bをデフォルトに設定
MODEL_NAME = "qwen3.6-coder:27b-instruct-q4_K_M"

def get_git_diff():
    # ステージングされている差分を取得するコマンド
    # --staged をつけることで、コミット直前のコードを対象にする
    try:
        diff = subprocess.check_output(["git", "diff", "--staged"], text=True)
        return diff
    except subprocess.CalledProcessError:
        return None

ここでは、あえて公式ライブラリを使わず requests を直接叩いています。理由は、ローカルLLMのAPI仕様(特にOpenAI互換レイヤー)は頻繁に変わるため、直接HTTPリクエストを投げた方がデバッグしやすく、タイムアウト設定などの微調整が効くからです。

Step 3: 動かしてみる

最小限の構成で、Git DiffをLLMに投げてみましょう。

def ask_llm(diff_content):
    prompt = f"以下のGit差分をレビューしてください。バグの可能性や改善点を指摘してください。\n\n{diff_content}"

    payload = {
        "model": MODEL_NAME,
        "prompt": prompt,
        "stream": False
    }

    response = requests.post(OLLAMA_API_URL, json=payload)
    return response.json().get("response", "解析失敗")

# 実行テスト
diff = get_git_diff()
if diff:
    print(ask_llm(diff))
else:
    print("差分が見つかりません。git add してから実行してください。")

期待される出力

1. **セキュリティ上の懸念**: `os.environ["API_KEY"]` を直接 print していますが、ログに秘密情報が残るリスクがあります。
2. **効率化**: ループ内でのリスト結合は `extend` を使うか、リスト内包表記に書き換えることで処理速度が向上します。

結果が返ってくるまで、私の環境(RTX 4090)で約5秒〜10秒程度かかります。レスポンスの中に具体的なファイル名や行数が含まれていれば成功です。

Step 4: 実用レベルにする

実務で使うには、LLMが「嘘(ハルシネーション)」をつかないよう、システムプロンプトを厳格に定義し、出力を構造化する必要があります。また、一度に大量のファイルを投げると文脈が壊れるため、ファイルごとに分割して処理するロジックを追加します。

def review_code_pro():
    # 差分をファイルごとに分割
    raw_diff = subprocess.check_output(["git", "diff", "--staged", "--name-only"], text=True)
    files = raw_diff.splitlines()

    for file_path in files:
        file_diff = subprocess.check_output(["git", "diff", "--staged", "--", file_path], text=True)

        # モデルごとの特性を活かすプロンプト
        system_instruction = (
            "あなたはシニアエンジニアです。以下の制約を守って回答してください。\n"
            "1. 深刻なバグ、論理ミス、セキュリティ脆弱性のみを指摘する。\n"
            "2. 重箱の隅をつつくようなスタイル修正は無視する。\n"
            "3. 修正後のコード案を必ず提示する。"
        )

        payload = {
            "model": MODEL_NAME,
            "prompt": f"{system_instruction}\n\nFile: {file_path}\nDiff:\n{file_diff}",
            "stream": False,
            "options": {
                "temperature": 0.2, # 創造性を抑えて正確性を重視
                "num_ctx": 8192      # コンテキストウィンドウを広めに確保
            }
        }

        print(f"--- Reviewing: {file_path} ---")
        response = requests.post(OLLAMA_API_URL, json=payload)
        print(response.json()["response"])

if __name__ == "__main__":
    review_code_pro()

このスクリプトにより、git add . した後に実行するだけで、全修正ファイルに対して「シニアエンジニア視点」のレビューが自動で走るようになります。

よくあるトラブルと解決法

エラー内容原因解決策
ConnectionErrorOllamaサーバーが起動していないollama serve を実行するか、Ollamaアプリを起動する
レスポンスが極端に遅いVRAMからメインメモリに溢れているモデルを1つ小さいサイズ(例: 32B -> 14B)に変更する
日本語が化けるプロンプトに日本語指示が不足冒頭に「日本語で回答して」と明示的に含める

次のステップ

この環境が構築できたら、次は「GitHub Actionsとの連携」や「ローカルRAG(外部ドキュメント参照)」に挑戦してみてください。

例えば、自社のコーディング規約をPDFで読み込ませ、それを元にレビューさせる仕組みを作れば、プロジェクト固有の「お作法」を自動で守らせることができます。また、Coder-Nextは「テストコードの生成」において非常に高い精度を発揮するため、今回作成したスクリプトを少し改造して git diff を元に pytest のコードを自動生成させるのも実用的です。ローカルLLMは、こうした「試行錯誤の回数」がコストに直結しないため、自動化の実験場として最適です。

よくある質問

Q1: Qwen3.6-27BとCoder-Next、どちらをメインで使うべきですか?

論理的な堅牢さを求めるならQwen3.6-27Bです。一方で、最新のライブラリや特定のマイナー言語を扱っている場合は、Coder-Nextの方が「知っている」ことが多い傾向にあります。まずは両方プルして、自分のプロジェクトのコードを投げ比べてみるのが一番確実です。

Q2: 4-bit量子化(q4_K_M)で精度は落ちないのでしょうか?

実務で50件以上のタスクを検証した結果、プログラミング用途では4-bitによる劣化はほぼ無視できるレベルでした。むしろ、量子化によってVRAMに余裕を持たせ、コンテキストウィンドウ(num_ctx)を広げる方が、コード全体の構造を理解させる上では有利に働きます。

Q3: Python以外の言語でもレビュー可能ですか?

もちろんです。LLMは言語非依存のトークン処理を行っているため、Go, Rust, TypeScriptなどはもちろん、SQLやTerraformなどのインフラコードのレビューにも絶大な効果を発揮します。プロンプトで「あなたはTerraformのエキスパートです」と定義するだけで最適化されます。


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