注意: 本記事の検証パートはシミュレーションです。実際の測定結果ではありません。
3行要約
- Anthropicの「Computer Use」をベースにしたOpenClawを、環境構築不要のクラウド上で24時間動かせる
- ブラウザ上の操作だけでなく、OSレベルの自動化を直感的なプロンプトで実行可能
- ローカル環境での重い負荷やエラーから解放され、スケーラブルな自動化ラインを即座に構築できる
このツールは何か
Clawi.aiを一言で表現するなら、「クラウド上で24時間眠らずに働く、あなた専用のデジタル・アシスタント」です。ベースとなっているのは、オープンソースで開発が進んでいる「OpenClaw」。これは、Anthropicが発表したClaude 3.5 Sonnetの「Computer Use」機能を拡張し、より実用的にブラウザやデスクトップアプリを操作できるように設計されたエージェントエンジンです。
通常、この種のエージェントを動かそうとすると、Pythonの仮想環境を作り、特定の解像度のディスプレイバッファを用意し、大量の依存ライブラリをインストールし……といった、エンジニアでも数時間はかかる面倒な作業が待っています。さらに、自前のPCで動かすとCPUとメモリを激しく消費するため、作業中にバックグラウンドで動かすのは現実的ではありません。
Clawi.aiは、これらのインフラ部分をすべてクラウド側に肩代わりさせました。「Zero Setup」の名の通り、ログインした瞬間にAIが操作するための仮想デスクトップが用意され、API経由、あるいはWebインターフェースから命令を出すだけで、AIがマウスを動かし、キーボードを叩き始めます。
SIer時代にRPA(Robotic Process Automation)の導入に苦労した私から見れば、これはまさに「RPA 2.0」の夜明けです。従来のRPAのように「ボタンの座標」を指定する必要はなく、「Amazonで最新のAI関連の書籍を3冊探して、そのタイトルと価格をGoogleスプレッドシートにまとめて」と伝えるだけで、AIが画面を見て判断し、実行してくれるのです。
なぜ注目されているのか
今、AI業界で最も熱い議論が交わされているのが「ChatからAgentへ」の移行です。チャットボットに答えを聞くだけの段階は終わり、AIに実際の仕事を「完遂」させることが求められています。しかし、その最大の障壁となっていたのが「実行環境の安全性と安定性」でした。
自分のメインPCでAIにマウス操作を許可するのは、セキュリティの観点からも、誤操作の怖さからも、勇気がいりますよね。Clawi.aiが注目されている最大の理由は、完全に分離されたクラウド環境(サンドボックス)でエージェントを動かせる点にあります。万が一AIが予期せぬ挙動をしても、自分のPCには一切影響がありません。
また、競合となるAnthropic公式のデモ環境などと比較しても、Clawi.aiは「24/7(24時間365日)」の稼働を前提としている点が強力です。例えば、深夜に海外のニュースサイトを巡回して情報を集め、朝までにレポートを完成させておくといった、サーバーサイドでのバッチ処理的な使い方が標準でサポートされています。
技術的には、低遅延なVNC(Virtual Network Computing)プロトコルと、最新のVLM(Vision Language Model)を組み合わせた高度なオーケストレーションが裏側で動いています。これにより、AIは「今、画面に何が映っているか」をミリ秒単位で認識し、人間と遜色ないスピードでアクションを決定できるのです。
検証シミュレーション:実際に使ってみた
今回は、Clawi.aiのAPIを利用して、特定のニュースサイトから情報を収集し、それを独自のダッシュボードに反映させるというフローをシミュレーションしてみます。
環境構築
クラウドサービスなので、ローカルに必要なのはAPIを叩くためのSDKだけです。非常にシンプルですね。
pip install clawi-python-sdk
基本的な使い方
以下は、Clawi.aiに対して「特定のURLを開き、特定の情報を抽出して報告させる」という基本的なスクリプトの例です。
import os
from clawi import ClawiClient
# APIキーの設定
client = ClawiClient(api_key="your_api_key_here")
# エージェントへの指示(プロンプト)
instruction = """
1. https://news.google.com を開いてください。
2. 『生成AI』に関する最新のニュース記事を上位3件抽出してください。
3. それぞれのタイトルとリンクをメモしてください。
4. 完了したら、その内容をJSON形式で出力してください。
"""
# エージェントの起動
print("エージェントを起動しています...")
session = client.create_session(
model="clawi-vision-v1",
capabilities=["browser", "terminal"]
)
result = session.run(instruction)
# 実行結果の確認
print("--- 実行結果 ---")
print(result.output)
# セッションの終了
session.close()
実行結果
実行すると、クラウド上のコンテナがスピンアップし、AIがブラウザを操作し始めます。ログには以下のような推移が表示されます。
[System] Session started: sess_abc123
[Agent] Navigating to https://news.google.com...
[Agent] Page loaded. Searching for "生成AI"...
[Agent] Found 3 articles.
[Agent] Extracting titles and URLs...
[Agent] Task completed.
{
"status": "success",
"data": [
{"title": "OpenAI、新たな検索機能を発表", "url": "https://example.com/news1"},
{"title": "国内企業、AI導入率が前年比20%増", "url": "https://example.com/news2"},
{"title": "Google、新型AIチップの量産を開始", "url": "https://example.com/news3"}
]
}
応用例
実運用を想定するなら、ただ情報を取るだけでなく「後続の処理」を任せるのがClawi.aiの醍醐味です。
例えば、「競合他社のECサイトの価格を毎日チェックし、自社の価格より安ければSlackで通知を飛ばし、かつ自社の管理画面にログインして価格修正の下書きを作る」といった、複雑なワークフローも一つのプロンプトで記述可能です。
# より高度な指示の例
advanced_prompt = """
1. 競合サイト A, B, C の商品価格を確認してください。
2. 自社商品 'SmartGadget X' の現在の販売価格 12,800円と比較してください。
3. もし12,000円以下の競合があれば、自社管理画面 (admin.example.com) にログイン。
4. 価格設定ページで『11,900円』に変更し、『下書き保存』ボタンをクリックしてください。
5. 最後に、一連のスクリーンショットをSlackに送信してください。
"""
このように、ログインが必要なページや、APIが提供されていない古い業務システムに対しても、AIが「画面を見る」ことで対応できるのが圧倒的な強みです。
メリット・デメリット
メリット
- 環境構築の手間がゼロ: Dockerの複雑な設定や、OSの互換性問題を完全に無視して、すぐにエージェントを動かせます。
- 24時間365日の稼働: 自分のPCの電源を切っても、クラウド上でエージェントがタスクを継続してくれます。
- スケーラビリティ: 10個、100個のタスクを並列で動かしたい場合も、クラウドのリソースを増やすだけで対応可能です。
- 高い汎用性: ブラウザ操作に限らず、ターミナル操作や設定ファイルの編集など、OS上のあらゆる操作を言語で指示できます。
デメリット
- 従量課金のコスト: クラウドのリソースとLLM(Claude等)のAPIをダブルで消費するため、長時間動かし続けるとそれなりのコストがかかります。
- 実行速度のボトルネック: 「画面を見て、考えて、マウスを動かす」というステップを踏むため、APIベースの自動化に比べると数倍から数十倍の時間がかかります。
- UIの変更に弱い: AIが判断するとはいえ、サイトのデザインが劇的に変わると、稀に誤操作をしたりループに陥ったりすることがあります。
どんな人におすすめか
Clawi.aiは、特に以下のような方にとって「神ツール」になる可能性が高いです。
- 非効率な定型業務に追われるマーケター: APIが公開されていない古いツールや、複数のWebサイトをまたぐデータの転記作業を自動化したい人に最適です。
- AIエージェントの開発者: ローカルの不安定な環境でデバッグする時間を捨て、インフラはClawi.aiに任せてプロンプトやロジックの改善に集中したい開発者に強くおすすめします。
- リサーチ業務の多い個人事業主: 毎朝のニュース収集、SNSの反応チェック、競合調査など、毎日30分〜1時間かけているルーチンワークをすべて丸投げできます。
- RPAの導入に挫折した企業: 高価で壊れやすい従来のRPAに疲れ、もっと柔軟で賢い「自律型エージェント」への移行を検討している担当者は必見です。
私の評価
星評価: ★★★★☆
正直な感想を言うと、「ようやく使い物になるエージェント環境が来たか」という手応えを感じています。
これまで、Anthropicの「Computer Use」は非常にポテンシャルが高いものの、一般ユーザーが手を出せる代物ではありませんでした。環境構築の壁が高すぎたんです。Clawi.aiは、その「ラストワンマイル」を非常にスマートに解決しました。SIerエンジニアとして多くの自動化案件を見てきた私からしても、この「セットアップ不要」という価値は計り知れません。
ただし、満点の星5つをつけなかったのは、やはり「コスト」と「確実性」の面でまだ課題があるからです。1つのタスクを完了させるのに、Claude 3.5 Sonnetのトークンを大量に消費するため、一回のリサーチで数百円かかることも珍しくありません。また、AIが「ボタンが見つからない」と迷っている間も課金は続くため、プロンプトの記述にはそれなりのスキルが求められます。
それでも、自分でPythonコードを書いてスクレイピングエンジンを作る苦労を考えれば、月額の利用料を払う価値は十分にあると思います。特に「APIがない壁」にぶち当たっている人にとって、Clawi.aiは唯一無二の解決策になるはずです。
まずは、自分の業務の中で「毎日15分くらい、画面をポチポチして終わる作業」を1つ選んで、Clawi.aiに任せてみることから始めてみてください。AIがあなたの代わりにマウスを動かしている様子を眺めるのは、少し不気味ですが、それ以上に「自由な時間が手に入る」という最高の快感を与えてくれますよ。
あわせて読みたい
この記事を読んだ方へのおすすめ
MINISFORUM UM780 XTX
クラウドではなくローカルでOpenClawを24時間回したいなら、省電力かつ高性能なこのミニPCが最適
※アフィリエイトリンクを含みます

