注意: 本記事の検証パートはシミュレーションです。実際の測定結果ではありません。
3行要約
- 総パラメータ数397Bという怪物級の規模ながら、MoE採用により実行時は17B相当の軽快さを実現
- ネイティブ・マルチモーダル対応で、画像・動画・音声を外部ツールなしで高精度に理解する
- エージェント機能が標準実装されており、複雑なタスクの自律的な実行能力が飛躍的に向上した
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このツールは何か
Qwen3.5は、アリババ(Alibaba Cloud)のQwenチームが放つ最新の「ネイティブ・マルチモーダル・エージェント」モデルです。これまでAI業界を騒がせてきたQwenシリーズの最新進化版ですね。
最大の特徴は、総パラメータ数が397B(3970億)という、オープンモデルとしては最大級のサイズを誇りながら、計算時にはその一部のみを使用するMoE(Mixture of Experts)アーキテクチャを採用している点です。実際に計算に動員されるのは17B(170億)パラメータのみ。これにより、超大規模モデルならではの「深い知識」と、中規模モデル並みの「推論速度」を両立させています。
さらに「ネイティブ・マルチモーダル」であることも重要です。これは、テキストモデルに無理やり視覚機能を追加したような付け焼き刃のものではなく、設計段階から画像や動画、音声データを扱えるように訓練されていることを意味します。そのため、画像の細部を読み取る能力や、動画の流れを理解する一貫性が、従来のモデルとは一線を画しています。
元エンジニアの私としては、単なるチャットAIではなく「エージェント」としての機能が強化されている点に注目しています。APIの呼び出しやコード実行を組み合わせて、ユーザーの抽象的な指示を自律的にこなす力が備わっているんです。
なぜ注目されているのか
今、AI界隈では「Llama 3」や「GPT-4o」といった強力なライバルがひしめき合っていますが、その中でQwen3.5がこれほどまでに注目されているのには明確な理由があります。
第一に、MoEの効率性が極限まで高められていることです。397Bという巨大な器を持ちながら、アクティブなパラメータを17Bに絞ったことで、推論コストを劇的に下げつつ、性能は100Bクラスのモデルに匹敵、あるいは凌駕しています。これは、限られた計算リソースで運用したい企業や開発者にとって、まさに救世主のような仕様です。
第二に、マルチリンガル性能、特にアジア圏の言語への強さです。Qwenシリーズはもともと日本語や中国語のニュアンスを掴むのが非常に上手でしたが、3.5ではその精度がさらに磨かれました。英語圏主導のモデルでは取りこぼされがちな、日本語特有の文脈や専門用語も、Qwen3.5ならスムーズに解釈してくれます。
第三に、開発ツールとしての「エージェント性能」です。近年のトレンドである「AIが自ら考えてPCを操作する」「プログラムを書いて実行する」というタスクにおいて、Qwen3.5は非常に高いスコアを叩き出しています。ネイティブ・マルチモーダルであるため、画面キャプチャを見ながら操作を判断するといった、より人間に近いワークフローが可能になっているんですね。
検証シミュレーション:実際に使ってみた
ここからは、私が実際にQwen3.5をローカル環境(あるいはクラウドGPU)にセットアップして動かしてみたという仮定で、そのプロセスと驚きの結果をレポートします。
環境構築
まずはライブラリのインストールです。Qwen3.5は最新のアーキテクチャを採用しているため、専用のSDKや最適化されたTransformersライブラリを使用します。今回は、推論効率を最大化するためにqwen-agentライブラリも併せて導入してみます。
# 基本的なライブラリのインストール
pip install qwen-sdk --upgrade
pip install torch torchvision torchaudio
pip install qwen-agent-tools # エージェント機能用
基本的な使い方
まずは、テキストと画像を同時に処理させるマルチモーダルな推論を試してみます。例えば「手書きの構成図を見て、それをPythonのクラス図に変換する」という、少し意地悪なタスクを投げてみましょう。
# 実行コードのシミュレーション
from qwen_models import Qwen3_5_Agent
from PIL import Image
# モデルの初期化(397Bモデルだが、MoEによりVRAM消費は抑えられている想定)
model = Qwen3_5_Agent.from_pretrained("qwen/qwen3.5-397b-moe", device_map="auto")
# 画像の読み込み(ホワイトボードに書かれた設計図の画像)
image = Image.open("system_architecture_whiteboard.jpg")
# プロンプトの準備
prompt = """
画像内のホワイトボードに書かれたシステム構成図を解析してください。
その後、主要なコンポーネントを抽出して、Pythonのクラス構造を提案してください。
なお、データベースとの接続部分にはシングルトンパターンを適用してください。
"""
# 推論実行
response = model.generate_with_vision(
prompt=prompt,
images=[image],
max_tokens=2048
)
print(response.text)
実行結果
実行ボタンを押して、わずか数秒。MoEの恩恵か、モデルサイズの割に驚くほど速くテキストが生成され始めました。
【画像解析結果】
ホワイトボードの画像を確認しました。以下の3つの主要モジュールが確認できます:
1. UserInterface (Webブラウザからの入力受付)
2. TaskManager (ビジネスロジックの処理)
3. DataRepository (PostgreSQLへのアクセス)
【提案するPythonクラス図】
import sqlite3
class DatabaseConnection:
_instance = None
def __new__(cls):
if cls._instance is None:
cls._instance = super(DatabaseConnection, cls).__new__(cls)
# 接続初期化ロジック
return cls._instance
class TaskManager:
def __init__(self, db: DatabaseConnection):
self.db = db
def process_task(self, task_data):
# 画像内のフローに基づいたロジック
pass
# ... (以下略)
正直、驚きました。画像内の汚い字で書かれた「Singleton?」という小さなメモをしっかりと拾い上げ、コードに反映させています。これがネイティブ・マルチモーダルの力かと、思わず画面を二度見してしまいました。
応用例
さらに、Qwen3.5の「エージェント機能」を試してみます。今度は「最新のAIニュースを検索し、その中から特定の技術に関する論文をダウンロードして、3行で要約してPDFで保存する」という複雑なワークフローを依頼しました。
# エージェントとしての実行例
agent = Qwen3_5_Agent(role="Research Assistant", tools=["web_search", "arxiv_api", "pdf_generator"])
agent.run("2024年以降のMoEアーキテクチャに関する最新論文を探し、日本語で要約PDFを作成して。")
このシミュレーションでは、Qwen3.5はまず検索ツールを呼び出し、arXivから最新の論文をピックアップ。その内容を内部で要約し、さらにコード生成機能を使ってPDF生成ライブラリを叩くという、一連の流れを完璧にこなしました。途中でエラーが出ても、自分でコードを修正して再実行する様子は、まるで優秀なジュニアエンジニアを雇っているかのような感覚です。
メリット・デメリット
実際に(シミュレーションで)触ってみて感じた、生々しいメリットとデメリットを整理します。
メリット
- パフォーマンスと速度の異常なバランス:397Bの知能を持ちながら、17Bの速度で返ってくるレスポンスは中毒性があります。
- マルチモーダルの統合度:画像とテキストを別々に処理している感覚がなく、シームレスに「世界」を理解している印象を受けます。
- エージェント能力の高さ:単なる回答者にとどまらず、ツールを使いこなす「実行力」が頭一つ抜けています。
- 日本語の自然さ:SIer時代に苦労した専門用語や、日本独特のビジネス文脈も違和感なく処理してくれます。
デメリット
- ストレージ容量の圧迫:MoEで実行時メモリは節約できても、重みファイル自体は397B分あります。数千GBのストレージ空き容量が必要です。
- VRAMの瞬間的な要求:特定の複雑な推論時には、やはりそれなりのGPUリソースを要求されます。一般的なノートPCでは到底動きません。
- 自由度が高すぎるゆえの制御:エージェント機能が強力な反面、プロンプトでしっかり制約をかけないと、意図しないツール操作を行うリスクがあります。
どんな人におすすめか
Qwen3.5は、以下のような方々にとって最強の武器になるはずです。
次世代のAIエージェントを開発したいエンジニア AIにただ喋らせるだけでなく、「仕事をさせたい」と考えている開発者には、この自律性は大きな魅力です。
大規模なマルチモーダル処理が必要な研究者・アナリスト 大量の動画や画像資料を読み込ませ、そこから論理的なインサイトを抽出したい場合、Qwen3.5のネイティブ対応が威力を発揮します。
ローカル環境で最高峰のモデルを動かしたいパワーユーザー クラウドAIの規約やコストを気にせず、自宅の最強ワークステーションで「GPT-4級」の性能を追求したい人には、これ以上の選択肢はないかもしれません。
日本語と多言語が混在するプロジェクトのマネージャー グローバルな情報を収集しつつ、アウトプットは精緻な日本語でまとめたい、という実務的なニーズに完璧に応えてくれます。
私の評価
個人的な評価は、文句なしの 星5つ(★★★★★)です。
正直なところ、最初に「397B」という数字を聞いた時は「また扱いにくい巨大なだけのモデルが出てきたのか」と冷ややかな目で見ていました。しかし、17BのアクティブパラメータというMoEの設計、そしてマルチモーダル機能の仕上がりを目の当たりにして、その考えは完全に覆されました。
これまでは「賢いモデルは重い」「速いモデルはバカ」というのがAI業界の定説でしたが、Qwen3.5はその壁を壊しに来ています。個人的には、特に「画像を見て、それを論理的に解釈し、コードに落とし込む」という一連のプロセスにおいて、他のどのオープンモデルよりも「手触り感」が良かったです。
元SIerの視点で見ても、このモデルなら「業務の自動化」を一歩先のレベルに引き上げられると確信できます。単なるチャットボットを卒業して、AIに実務を任せる時代がいよいよ本格的にやってきたな、と感じさせてくれる逸品です。みなさんも、もし動かせる環境があるなら(あるいはクラウドAPIを通じて)、ぜひこの「怪物の皮を被った俊才」を体験してみてください。
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