注意: 本記事の検証パートはシミュレーションです。実際の測定結果ではありません。
3行要約
- 画像や動画、UI画面などの「視覚的知識」を、AIエージェントが検索・利用しやすい形でインデックス化するツール
- 従来のテキストベースのRAG(検索拡張生成)を視覚領域に拡張し、マルチモーダルな意思決定を可能にする
- UI自動化やロボティクス、複雑なダッシュボード解析など、従来のLLMだけでは困難だったタスクの精度向上が期待できる
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このツールは何か
みなさん、こんにちは。AI専門ブロガーのねぎです。
最近のAI界隈は「マルチモーダル」一色ですね。GPT-4oやClaude 3.5 Sonnetなど、画像を見て内容を理解できるモデルが当たり前になってきました。しかし、開発者の視点で見ると、まだ一つ大きな課題が残っています。それは「大量の視覚情報をどうやって効率的に管理し、AIエージェントに活用させるか」という点です。
今回ご紹介する「Polyvia」は、まさにその課題を解決するために登場した、エージェントのための「視覚的知識インデックス(Visual Knowledge Index)」です。
簡単に言うと、これまでテキストに対して行っていた「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」を、視覚的なデータに対しても行えるようにする仕組みです。例えば、Webサイトのスクリーンショット、アプリの操作画面、あるいは工場の監視カメラ映像など、視覚的な情報を「クエリ(質問)可能な状態」でデータベース化します。
従来のAIエージェントは、画面を見てその都度判断を下すことは得意でしたが、「3時間前の画面の状態はどうだったか?」や「この複雑なダッシュボードの左下にあるグラフの推移を教えて」といった、膨大な視覚情報の中から特定の情報を引き出す作業は苦手でした。Polyviaは、こうした視覚的なコンテキストを構造化して保持し、エージェントが必要な時に必要な部分だけを「参照」できるようにします。
SIer時代、私は多くの画面自動化ツール(RPA)の開発に携わってきましたが、UIの変更に弱いという弱点に常に悩まされてきました。Polyviaのような「視覚的な構造を理解し、クエリで呼び出せる」ツールがあれば、当時の苦労も半分以下になっていたのではないかと、少しワクワクしています。
なぜ注目されているのか
Polyviaが今、Product Huntなどで注目を集めている理由は、現在のAI開発のトレンドである「自律型エージェント」と「マルチモーダルRAG」の交差点に位置しているからです。
これまでのRAGは、PDFやテキストファイルをベクトル化して保存し、ユーザーの質問に関連する文章を抽出する手法が一般的でした。しかし、世の中の情報はテキストだけではありません。業務システム、CADデータ、地図情報、医療画像など、視覚的なレイアウトそのものが重要な意味を持つケースは多々あります。
Polyviaが従来の技術と一線を画すのは、単なる「画像のベクトル検索」ではなく、「Queryable(クエリ可能)」である点です。視覚情報を単なるピクセルとして扱うのではなく、その中にあるオブジェクト、テキスト、それらの位置関係や時間的な変化を、エージェントが解釈可能なインデックスとして再構築します。
競合となるツールとしては、Microsoftの「Set-of-Mark (SoM)」プロンプティング技術や、各種VLM(Vision Language Models)をベースにしたライブラリがありますが、Polyviaはそれらを「インデックス(索引)」という形で抽象化し、エージェントのメモリ(記憶)として統合しやすく設計されている点が非常にユニークです。
また、開発者フレンドリーなAPI設計も魅力ですね。複雑な画像処理パイプラインを自前で構築することなく、数行のコードで「視覚的な知恵」をエージェントに実装できる。このスピード感こそが、今の激しいAI開発競争において大きなアドバンテージになると感じています。
検証シミュレーション:実際に使ってみた
ここからは、私が実際にPolyviaを自身の開発環境に導入し、簡単なUI解析エージェントを作成したという想定で、その流れをシミュレーションしていきます。
今回の目標は、「ECサイトの管理画面のスクリーンショットを複数読み込ませ、在庫切れの商品を特定し、その位置を正確に把握する」というタスクです。
環境構築
まずはライブラリをインストールします。依存関係として、画像処理用のライブラリやベクトルデータベースのクライアントが含まれるようです。
pip install polyvia-sdk
pip install pillow requests
基本的な使い方
Polyviaの核心は、画像を「インデックス化」し、それに対して自然言語や構造化クエリを投げることにあります。
import os
from polyvia import PolyviaClient
from PIL import Image
# クライアントの初期化(APIキーは環境変数から取得)
client = PolyviaClient(api_key=os.getenv("POLYVIA_API_KEY"))
# 1. 視覚情報の読み込みとインデックス化
# 今回はECサイトのダッシュボード画面を解析します
image_path = "dashboard_screenshot_001.png"
index_id = "inventory_management_index"
# 画像をアップロードして「知識」として登録
# Polyviaは内部でセグメンテーションとOCR、空間的特徴抽出を自動で行います
with open(image_path, "rb") as f:
client.index_visual_knowledge(
index_id=index_id,
image_data=f.read(),
metadata={"timestamp": "2023-10-27T10:00:00", "page": "inventory_main"}
)
# 2. 視覚的知識に対するクエリ
# 「在庫が0になっている商品はどこにありますか?」という質問を投げます
query_text = "Which items are out of stock and where are they located in the UI?"
result = client.query(
index_id=index_id,
query=query_text,
detail_level="high"
)
# 3. 結果の表示
print(f"Query: {query_text}")
print(f"Response: {result.answer}")
for element in result.visual_references:
print(f"Found element: {element['label']} at bbox: {element['bbox']}")
実行結果
上記のコードを実行すると、PolyviaのバックエンドでVLM(Vision Language Model)が動作し、画像内の各要素をスキャンします。従来のOCRとは異なり、「在庫が0」という数値の意味と、それがどの商品名と同じ行にあるかという「空間的関係」を理解した回答が返ってきます。
Query: Which items are out of stock and where are they located in the UI?
Response:
在庫切れの商品は2点確認されました。
1. 「Wireless Mouse M-123」: 在庫数が赤字で「0」と表示されています。
2. 「USB-C Hub Gen2」: ステータス欄に「Out of Stock」のラベルがあります。
Found element: Wireless Mouse M-123 at bbox: [120, 450, 140, 600]
Found element: 0 (Stock count) at bbox: [120, 800, 140, 820]
Found element: USB-C Hub Gen2 at bbox: [250, 450, 270, 600]
Found element: Out of Stock Label at bbox: [250, 800, 270, 880]
応用例:エージェントのワークフローへの組み込み
さらに実践的な使い方として、LangChainのようなフレームワークと組み合わせることで、自律型エージェントの「視覚メモリ」として機能させることができます。
例えば、Webブラウジングを行うエージェントが、複雑なドロップダウンメニューの中から特定の項目を探す際、過去にインデックス化した画面構造を参照することで、無駄な操作を省き、正確なクリック位置(Bounding Box)を特定できるようになります。
# プロンプトの例(エージェントに与える指示)
prompt = f"""
あなたはPolyviaの視覚インデックスを参照できるブラウザ操作エージェントです。
現在の画面のインデックス情報:{result.visual_references}
上記のバウンディングボックス情報を元に、在庫切れ商品の『詳細』ボタンをクリックするPlaywrightコードを生成してください。
"""
このように、画像から直接座標を取得し、それを次のアクション(コード生成や実行)に繋げられるのが、Polyviaの真骨頂ですね。
メリット・デメリット
メリット
- 視覚情報の構造化: 単なる画像認識を超えて、UI要素の親子関係や空間的な位置関係を「検索可能」な形で保持できる。
- エージェントの精度向上: LLMが画像全体を読み込む必要がなく(トークン節約)、必要な部分だけをインデックスから引き出すため、誤認識(ハルシネーション)が減る。
- マルチモーダルRAGの簡略化: 複雑なビジョンパイプラインを自作せずとも、API経由で高度な視覚検索を実装できる。
- 時系列の変化に強い: 過去のスクリーンショットを蓄積することで、「以前と比較して何が変わったか」をクエリできるようになる。
デメリット
- コスト面: 高度なVLMをバックエンドで使用するため、APIの利用料金が高くなる可能性がある(特に大量の画像をインデックスする場合)。
- 遅延(レイテンシ): リアルタイムの動画解析などに使うには、インデックス化とクエリのレスポンスタイムがボトルネックになる場合がある。
- 日本語対応の精度: UI内のテキスト(OCR部分)について、フォントやレイアウトによっては日本語の認識精度にバラつきが出る可能性がある。
どんな人におすすめか
Polyviaは、特に以下のような開発者やプロジェクトに最適だと思います。
- 次世代のRPA・ブラウザ自動化を開発している方: 従来のDOM操作や単純な画像マッチングに限界を感じているなら、Polyviaによる「意味論的なUI理解」はブレイクスルーになるはずです。
- マルチモーダルなAIエージェントを作りたい方: 「画面を見て考え、操作する」自律型エージェントのメモリ(記憶)部分として、強力な基盤になります。
- 複雑なダッシュボードや監視システムの自動化を検討している方: 数値やグラフが並ぶ画面をAIに監視させ、異常時に「どこで何が起きているか」を正確に報告させたい場合に有効です。
- アクセシビリティ支援ツールの開発者: 視覚的な情報を構造化テキストとして抽出できるため、視覚障がい者向けの画面解説エージェントなどにも応用できそうです。
私の評価
個人的な評価は、星4つ ★★★★☆ です!
正直なところ、これまで「視覚情報のRAG」は非常にハードルが高い領域でした。自分でモデルを選定し、セグメンテーションを行い、ベクトルDBに突っ込む……。この工程をPolyviaがパッケージ化してくれたことは、開発者にとって大きな救いです。
SIer時代の経験から言わせてもらうと、企業のレガシーシステムはDOM構造がめちゃくちゃだったり、Canvasで描画されていて中身が取れなかったりすることが多々あります。そんな「プログラム的には不親切だが、人間には見える」システムをAIに扱わせるための「架け橋」として、Polyviaは非常に強力な武器になります。
ただ、まだ新しいプロジェクトということもあり、大規模なデータセットを扱った際のパフォーマンスや、エンタープライズ用途でのセキュリティ(画像データの取り扱い)については、今後さらに深く検証していく必要があると感じました。
とはいえ、「AIに目を持たせるだけでなく、その見たものを記憶し、自在に検索させる」というアプローチは、今後のAIエージェント開発において必須のピースになることは間違いありません。皆さんも、ぜひ一度自分のプロジェクトに組み込んで、その「視覚的なインテリジェンス」を体感してみてください!
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