3行要約

  • 元StripeのLachy Groom氏らが率いるPhysical Intelligenceが、ロボット専用の汎用的なAIモデルを開発しています。
  • 数十年にわたりロボティクスを研究してきた専門家たちが集結し、今こそ「物理世界を動かす脳」を完成させるタイミングだと確信しています。
  • 特定の作業しかできない従来のロボットではなく、どんなロボットにも搭載できる汎用的な知能の実現を目指しています。

何が発表されたのか

今回注目を集めているのは、Physical Intelligence(PI)というスタートアップの動向です。この企業は、ChatGPTが言葉を扱うように、ロボットが物理的な世界を自在に操るための「脳」を構築しようとしています。

中心人物は、決済大手Stripeの初期メンバーであり投資家としても知られるLachy Groom氏。彼は、この分野で数十年のキャリアを持つ専門家たちとタッグを組みました。彼らの主張は非常に明快です。それは、「これまでバラバラに研究されてきた技術やデータが、ようやく一つの強力なAIモデルとして結実する時期が来た」ということです。

これまでのロボットは、工場で特定の部品を運ぶといった「専用のプログラム」で動くのが主流でした。しかし、PIが開発しているのは、人間と同じように初めて見る道具を扱ったり、複雑な環境で臨機応変に動いたりするための大規模な基盤モデルです。まさに、物理世界における「GPT-4」のような存在を作ろうとしているわけですね。

競合との比較

項目今回の発表 (Physical Intelligence)ChatGPT (OpenAI)Claude (Anthropic)
主な操作対象物理世界(ロボットの体)デジタルテキスト・画像デジタルテキスト・コード
目的リアルタイムの行動制御情報生成・対話論理推論・文章作成
入出力センサーデータ ➔ 動作指令テキスト ➔ テキストテキスト ➔ テキスト
強み物理的な空間把握と判断膨大な知識と多言語対応高い倫理性と精緻な論理

業界への影響

この技術が確立されると、ロボット業界の勢力図は一変すると思います。

まず、ハードウェアメーカーの役割が変わります。これまでは「どう動かすか」というソフトウェア部分もメーカーが苦労して開発してきましたが、今後はPIのような「汎用的な脳」を搭載するだけで、高度な作業ができるようになるからです。これは、PC業界においてWindowsやmacOSが登場したときのような、プラットフォーム化の波がロボット界にも来ることを意味しています。

また、製造業だけでなく、物流、介護、さらには家庭内といった、これまで自動化が難しかった「非定型な環境」へのロボット導入が加速するでしょう。論理的な推論ができるAIと、物理的に動けるAIが組み合わさることで、私たちの生活圏にロボットが自然に溶け込む未来が現実味を帯びてきました。

私の見解

元SIerのエンジニアとして、ロボットの現場を少し知っている身からすると、このニュースには非常にワクワクします。正直なところ、これまでのロボット制御は「ティーチング」と呼ばれる地道な設定作業の連続で、少し環境が変わるだけで動かなくなるのが当たり前でした。

しかし、Physical Intelligenceが目指しているのは、その「泥臭い調整」をAIの学習によって突破しようという試みです。個人的には、Lachy Groom氏のようなシリコンバレーの目利きが、あえて「今がその時だ」と断言している点に強い説得力を感じます。

もちろん、物理的な安全性やリアルタイム性の確保など、解決すべきハードルは山積みだと思います。それでも、デジタル空間で起きたAI革命が、いよいよ私たちの肉体がある物理世界に本格的に波及してきたのだと感じずにはいられません。ぜひ、みなさんもこの「ロボットの脳」の進化に注目してみてください。


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