3行要約

  • CES 2026では「AIそのもの」の展示から、生活や産業に溶け込んだ「AI実装製品」へと軸足が完全に移った。
  • 単なるチャットUIの提示は終わり、エッジAIやバーティカル(垂直統合)な特定用途向けソリューションが主流に。
  • AIは「特別な機能」ではなく、電気やインターネットと同様の「標準的な基盤技術」としてのフェーズに突入した。

何が発表されたのか

CES 2026において、AIはもはや「未来を語るためのキーワード」としての役目を終えた。各社が発表したのは、LLM(大規模言語モデル)の凄さではなく、それをどう既存のハードウェアやワークフローに組み込み、実利を出すかという「実装の成果」である。

具体的には、以下の3つのトレンドが顕著となった:

  1. エッジAIの深化: クラウドを介さず、PC、スマホ、家電内部のNPU(ニューラル処理ユニット)で完結する推論処理。
  2. SDA(Software Defined Architecture)の成熟: モビリティやロボティクスにおいて、AIがOSレベルでハードウェアを制御し、購入後も機能が進化し続ける仕組み。
  3. アンビエント・コンピューティング: ユーザーが「AIを使っている」と意識させない、状況判断型の自動化。

もはや「AI搭載」はマーケティング用語としての効力を失い、その精度と電力効率、そして「何ができるか」という実利だけが評価される段階に入ったと言える。

競合との比較

項目CES 2026(実装段階AI)ChatGPT (OpenAI)Claude (Anthropic)
主な形態物理デバイス、特定業務ツール汎用チャット、API汎用チャット、コーディング
得意領域リアルタイム制御、オフライン処理広範な知識、クリエイティブ高度な推論、アーティファクト
ユーザー体験AIを意識させない自動化対話による問題解決緻密な思考を伴う共同作業
主な戦場消費電力効率、低遅延パラメータ数、マルチモーダル倫理、文脈理解、安全性

業界への影響

この「AIのインフラ化」は、IT業界だけでなく製造業やサービス業のパワーバランスを激変させる。

まず、**「AIを作れる会社」よりも「AIを使いこなすハードウェア/サービスを持つ会社」**に主導権が移る。これまではOpenAIやGoogleといったモデル開発者が王座にいたが、実装フェーズではNVIDIAのようなチップメーカー、あるいはそれらを組み込んで「使い勝手」を定義するデバイスメーカーの付加価値が高まる。

次に、エンジニアに求められるスキルセットも変化する。プロンプトエンジニアリングのような表面的な技術の価値は暴落し、代わりに「低リソースなエッジ環境でいかにモデルを軽量化して動かすか(量子化・蒸留技術)」や、「AIが出力した結果をいかに既存システムと安全に連携させるか」というシステムアーキテクチャ設計能力が最重要視されるようになる。

Negi Labの見解

ようやくAIも「お祭り」の時期を終えて、地味で泥臭い「実効性」のフェーズに来たか、というのが率直な感想だ。これまでは「AIでこんなことができます」という空手形を振りかざすスタートアップが目立ったが、CES 2026で示されたのは「で、それはいくらコストを下げ、どれだけ時間を短縮したのか?」というシビアな現実である。

我々Negi Labが注視すべきは、LLMのパラメータ数競争ではない。それよりも、特定のセンサーデータや業界固有のログを、どれだけ低消費電力かつ高精度に処理できるかという「垂直統合モデル」の進化だ。

技術者諸君に言っておくが、「AIを使っています」はもはや履歴書に書くようなことではない。「そのAIを、制約のある環境下でビジネス要件に合致させた」と言えるようになって初めて、この「実装段階」の荒波を生き残れるだろう。派手なデモに騙されず、中身のアーキテクチャを冷徹に見極める目が必要だ。


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